昨年、当院にて前核期人為的透明帯除去法(ZP-free)を実施して妊娠された2名の方が、
無事出産されました。
受精卵には、卵細胞質のまわりに透明帯(Zona pellucida)と呼ばれる殻が存在します。
良好な胚盤胞がなかなか得られない方の受精卵の中には、卵細胞質と透明帯が癒着してい
るものが存在する場合があります。この癒着を原因として、卵細胞質が細胞分裂する際に多くのフラグメント(細胞質のかけら)が発生し、胚盤胞への発育を阻害することが知られています。ZP-freeとは、そのような受精卵に対して前核期(採卵翌日の受精確認後)に人為的に透明帯を除去することで、卵細胞質と透明帯の癒着を切断する方法です。ZP-freeを実施することでフラグメント発生の低下および培養成績が向上するとされており、2020年に世界で初めて妊娠・出産が報告されました。
昨年当院では、それまでは胚盤胞になりにくく分割期胚時点でもフラグメント発生が顕著であった2名の方に対してZP-freeを実施しました。ZP-free周期では良好な胚盤胞を得ることができ、2名とも妊娠が成立し、その後無事出産されました。
また、今年は同様に胚盤胞獲得が困難な1名の方に対してZP-freeを実施し、良好な胚盤胞を得ることができました。これまでにZP-freeを実施した方全員が良好な胚盤胞を獲得することができたことより、受精卵が得られてもその後の胚発育が不良で胚移植ができない方にとってZP-freeは有効な方法であると考えています。
現在、ZP-freeは保険適用されていないため、自費での採卵の方のみが実施可能です。また、適応を確認してからの実施とさせていただいております。ご興味のある方は、診察の際に医師にご相談ください。
















