受精卵取り違えに関する取組

審査の認証・認定を取得しています

ISO9001の認証を取得

IVF大阪クリニックは2007年1月にISO9001の認証を取得しています。ISO9001とは品質管理における世界共通のルールで、品質管理に焦点をあてた企業や病院の経営に関するルールの一つです。患者様に、より良いサービスをご提供するためのシステムを管理することを目的としていますが、患者様からお預かりした受精卵の取り違え等の事故が発生しないようなシステムが構築されているかも、外部の審査員によって重点的にチェックをされます。さらに定期的に内部監査(クリニックのスタッフが自ら行う監査)を行い、業務が正しく行われているか、問題発生の原因となりうるシステムの不具合がないかを監査します。また、姉妹クリニックであるIVFなんばクリニック、HORACグランフロント大阪クリニックとの相互内部監査も実施しています。

JISARTの認定を取得

JISART(日本生殖補助医療標準化機関)は、日本の不妊治療における治療の質の向上と、その水準維持を達成すべく結成された生殖補助医療専門施設が加盟している団体で、患者様の満足度を向上させることを主な目的としています。ISO9001と同様に、事故やトラブルが発生したときの対応方法や安全管理、卵や精子を扱うときのダブルチェックの方法、停電時のバックアップ体制などの危機管理対策がなされているかを厳しく審査されます。

すべての工程で患者認証システムによるWチェックを実施しています。

胚の取違いを防ぐため、胚を別の容器に移す際(採卵・胚移植・胚凍結・胚融解・精子処理など)、一般体外受精や顕微授精の際など、すべての工程で2名の胚培養士による確認を行なっています。胚培養士の人数が少ない施設では、すべての工程でWチェックをするのは困難な場合がありますが、IVF大阪クリニックでは15名以上の胚培養士が勤務しており、休日に関係なく常にWチェックが出来る体制を取っています。

さらに、当院では患者認証システムを導入しており、目視でのWチェックに加えて、バーコードを専用の機器で読み込むことで、ヒューマンエラーをなくし胚の取り間違いを防ぐだけでなく、どの工程で誰が何を確認したかの追跡が可能となっています。

採卵

採卵前の患者様確認

同姓同名や類似名の患者様がいらっしゃるため、患者様の入室前には、フルネーム+生年月日 でご本人確認を実施しています。
極度に緊張され、他人の名前を言っても「はい」と答えられてしまう可能性があるため、必ず患者様ご本人にフルネーム+生年月日をおっしゃっていただき確認を実施しています。
入室されたのち、超音波担当者が再度患者様にお名前と生年月日をおうかがいし、間違いがなければ体外受精のスケジュール表と患者様のリストバンド、さらに卵胞液を入れるスピッツが同一患者様のものであることを患者様認証システムで確認します。
その後、担当培養士が採卵室内へ『○○○○様の採卵であるか』の最終確認をおこなっています。

採卵時の卵胞液の受け渡し

患者様ごとに培養室で決められた識別の色を卵胞液のスピッツの蓋に印を入れ、側面には患者様の名前入りのバーコードを貼ることで識別を確実にしています。次の採卵の患者様の卵胞液と混ざってしまうことを避けるため、採卵終了後に培養室につながるパスウインドウを完全に閉めています。培養室では全てのスピッツを回収し卵子を探し終わるまで次の患者様の採卵を開始しませんので、他の患者様の卵胞液と入れ違いになる可能性はありません。

精子調整

精液採取時のご主人様の確認

採精室にご案内の際、奥様のお名前・生年月日またはご自宅の電話番号をご主人様におっしゃっていただきます。採精容器に奥様のお名前とご主人様のお名前、それぞれの生年月日が記載されたシールを貼っていますので(予め決めてある色で色付けしています)そのお名前に間違いがないかも確認していただきます。
そのあと、患者様認証システムでご主人様のリストバンドと採精容器の認証をおこなっています。

当院では体外受精におけるお名前の記載はすべて奥様の名前に統一しているため、精液の容器にも使用するチューブにも奥様のお名前を記載しています。

精子調整

1クリーンベンチ(作業台)1検体制

精子の調整に必要な遠心機、インキュベータ(保温器)も1台のクリーンベンチ内にあり、基本的に調整の間その中から出すことはありません。調整前に必要なスピッツに患者様のお名前が入ったバーコードシールを貼り、すべてのシールに決められた色をつけ、採精後の容器を含めクリーンベンチ内にあるものが対象の患者様に使用するものであることをWチェックしています。 そのあと、患者様認証システムで認証をおこなっています。

受精・胚培養

受精

採卵後の卵子が培養してあるシャーレ、精子調整後のスピッツ、卵子と精子を混ぜ合わせるシャーレのお名前のWチェックをおこないます。そのあと、患者様認証システムで認証をおこないます。患者様のお名前が入ったバーコードシールはシャーレ本体と蓋の両方に貼っており、たとえ容器と蓋が入れ違っていても認証の工程で確実に識別できます。(1クリーンベンチ1検体制をとっていますので、実際は容器と蓋が入れ違うことはありません。)

胚培養

受精が確認できた胚を、胚培養用のシャーレに移動させる際にもシャーレのお名前のWチェック後、患者様認証システムでも認証をおこなっています。
培養室には小型のインキュベータを24台設置しており、中は上下段に分かれています。1台のインキュベータには最大でも2名分のシャーレ(上段/下段)しか培養していません。また、同姓の患者様やよく似たお名前の患者様が同時期に体外受精を実施されている場合には、胚培養シャーレは出来るだけ場所を離して入れ「同姓の方が体外受精実施中」という注意を促すことで、培養室にいるすべてのスタッフがそのことを把握できるようにしています。

胚移植

これから胚移植を実施する患者様のお名前が書かれた用紙を、培養士から看護師に渡します。看護師はその用紙に書かれた患者様を胚移植室にご案内します。患者様の入室前にフルネーム+生年月日 でご本人確認を実施しています。入室されたのち、超音波担当者より再度患者様にお名前と生年月日をおうかがいし、体外受精のスケジュール表と患者様のリストバンド、胚移植用のシャーレが同一患者様のものであることを患者様認証システムで確認します。

胚移植直前には「○○(フルネーム)様○個胚移植します。」と声に出し、胚移植に関わる全員(患者様、医師、看護師、超音波担当者、胚培養士)で最終確認を行い、移植を実施しています。

最後に

私たち生殖医療に従事するスタッフは、患者様の大切な胚をお預かりするという重大な責任を担っていることをしっかりと心して、日々の培養室業務を遂行しています。今後もISO9001やJISARTのガイドラインを基にしたシステム作り、リスクマネジメントで事故防止に努めていきます。