ニュース&トピックス

topics:当院の胚盤胞到達率について

2019.7.24
レポート
生殖技術部門より

ホームページをご覧のみなさまへ

精子と受精した卵子、受精卵を胚と呼びます。
順調に発育した胚は、2,3日目の分割期を経て、5日目頃に胚盤胞期まで発生します。胚を子宮にお戻しする胚移植には、分割期、あるいは胚盤胞期胚のどちらかが用いられます。

胚盤胞期まで培養するメリットは、良好な胚を選別できることです。分割期胚が胚盤胞に到達する過程において途中で発育が停止してしまう胚は淘汰されるため、胚盤胞はある程度の選別を受けた良好な胚となります。実際に胚盤胞を胚移植した場合、分割期胚移植に比べ妊娠率が高く、当院におけるそれぞれの妊娠率は、単一胚盤胞移植で41.8%、単一分割期胚移植で18.7%となっています。

しかし、上記のようなメリットがある一方で、デメリットもあります。分割期胚以降、胚盤胞まで成長しないことがあるため培養後に得られる移植可能胚の個数が減ってしまうこと、最悪の場合は胚盤胞が得られず胚移植がキャンセルになってしまうこともあります。

 

当院では特別な場合を除いて、全ての患者様に胚盤胞までの培養をお勧めしています。胚の培養技術に自信があるからです。今日は、胚を高率で胚盤胞まで発育させるために当院が行っている培養環境の工夫の一つ、培養液の選択について紹介します。

当院ではSequential mediumとSingle step mediumの2種類の培養液を使用しています。
Sequential mediumとは、胚が成長する過程において、受精後~分割期胚までと胚盤胞では必要とする栄養の種類や濃度がそれぞれ異なるということに着目した培養液です。したがって、受精後培養3日目までの分割期胚とそれ以降で組成の異なる培養液を使用します。一方、Single step mediumは、必要な栄養素は胚が選択するという考えに基づいており、受精後~胚盤胞まで同一組成の培養液で胚を培養することができます。当院では、この2種類の培養液を、過去の体外受精の成績などを考慮して、使い分けることで良好な培養成績を維持しています

今日は、培養環境の工夫の一つを紹介しましたが、今後も培養環境の維持・改善に努めてまいります。