診療のご案内

経膣的腹腔鏡(THL)

不妊症の原因には卵管因子、卵巣因子、男性因子など様々なものがあります。原因を調べることと、その原因に基づいた治療を行うことは、不妊症診療における最も重要なポイントといえます。そのような不妊症検査・治療において、腹腔鏡により得られる情報は大変有用です。一般的な腹腔鏡は下腹部に小さな切開を数箇所入れ、そこから内視鏡を挿入し、卵管など腹腔内を観察します。その場合、麻酔下での手術となり、数日間の入院が必要となります。一方、THLは膣から内視鏡を挿入し腹腔内を観察するので(図1)、おなかに傷はつかず、朝来院し夕方には帰宅できますので、入院の必要もありません。

THLの意義として
  1.卵管因子の評価:卵管性不妊症(卵管周囲癒着・卵管采異常)
  2.子宮内膜症の診断
  3.早発卵巣不全(POF)の評価を考えています。

図1

卵管性不妊症(卵管周囲癒着・卵管采異常)、子宮内膜症の診断

不妊症の原因として卵管に異常があるものは全体の約30〜40%といわれています。しかし、その診断は、一般的に行われている子宮卵管造影検査では分からないことも多くあります。また、さまざまな検査にて不妊の原因が見当たらないもの、すなわち原因不明不妊(機能性不妊)においても、実際は卵管などに異常が隠れていることも考えられます。このように不妊症原因の重要な位置を占める卵管の評価は通常の検査では限界があるといえます。前述したように、卵管の評価方法として内視鏡検査である腹腔鏡があります。THLでは生理食塩水を腹腔内に流しながら観察するため、卵管の細かい構造、特に卵管采の小さな病変まで詳細に観察することが可能であり、卵管因子の診断に大変有用です。また卵管だけでなく、卵巣や骨盤壁などの小さな子宮内膜症病変等も観察することができます。
THLにて得られた情報はその後の不妊治療を行う上での有意義な判断材料となります。卵管に問題がない場合は、タイミング法、人工授精での妊娠が可能と判断します。もし卵管に問題がある場合は、早期の体外受精に進んだり、場合によっては経腹的腹腔鏡にて癒着剥離術や卵管形成術を行ったりします。

卵管性不妊症、子宮内膜症の診断

このように正常の卵管采は、排卵時期になると排卵される卵をピックアップするために卵巣に寄り添うように動いてきます(写真@)。また卵管采にはイソギンチャクのような細かいヒダがあり(写真AB)、卵のピックアップや輸送という重要な卵管の機能を担っています。何らかの感染や炎症、子宮内膜症などにより、卵管の動きが制限されるような癒着ができたり(写真CD)、卵管采のヒダに異常を生じることがあります(写真EF)。このような卵管は、卵のピックアップや輸送に障害をきたし、自然妊娠は困難となります。また超音波検査では分からないような子宮内膜症病変も観察することができます(写真G)。

グラフ1

早発卵巣不全(POF)の診断

POFとは40歳未満の方で、何らかの原因により卵胞が発育せず、月経が止まったり、月経周期の乱れが生じたりする状態です。女性の約1%に見られることより、POFはまれな病気ではないといえます。原因はさまざまなことが考えられますが、原因不明のもの、何らかの免疫系異常によるものなどがあります。しかし、原因を特定することは難しい場合が多く、そのため、現在のところPOFの完全な治療法が確立されていないのが現状です。
確実な診断をし、原因を明らかにすることを試み、よりよい治療法を確立することを目指すためには、 卵巣の形態的評価は欠かせないものと思われます。その評価法としてTHLがあります。THLの卵巣所見により、今後卵胞発育の可能性があるかどうかを判断します。
POFは大変、治療に苦慮することが多く、患者さまの精神的ストレス、焦りも大きいかと思われます。医師、看護師、また心理カウンセラー含め、患者さまの治療に取り組んでまいりますので、焦らず、ゆったりと長期の眼で治療をしていきましょう。

早発卵巣不全(POF)の診断

THL専門チームの医師(井田)、看護師(濱田、澤辺、森分、下西、金田)、心理カウンセラー(荻野)が担当します。


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