診療のご案内
生殖遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリングは遺伝子や染色体に関連したことがらについて、ご相談を受ける場です。不安に感じておられること、疑問に思われていることを伺い、それらについて適切な情報を丁寧にわかりやすくご説明いたします。また、遺伝や妊娠に関する心配や不安、これらをめぐってご家族の間で生じる悩みについても、ゆっくりお話ししていただき、皆様が十分に納得して次の一歩を踏み出せるよう、お手伝いさせていただきます。
■例えばこんな悩み…
- 年齢や不妊治療の赤ちゃんへの影響が心配なのだけれど…。
- 流産をしたのはどうして? 染色体の異常って、どういうこと?これからも繰り返すの?
- 染色体検査を受ける前に、染色体や検査でわかることなど詳しい話を聞きたい。
- 染色体検査の結果の意味がよく分からない。今後の治療へのつながりなど、もっと詳しく知りたい。
- 妊娠したら、羊水検査って受けた方がいいの?羊水検査で何がわかるの? いつするの?
- 羊水検査以外に赤ちゃんの様子がわかる検査ってあるの?
- 着床前診断って、どういう検査? 誰でもできるの?
- 私や私の家族の病気は赤ちゃんに遺伝するの?同じ病気をもって生まれてくる可能性は?
- なかなか着床しない、一度だが流産している、など・・・
遺伝カウンセリングで相談できる内容かわからないなど、受診するかどうか判断に迷われている場合にも、お気軽にご相談ください。
※通常の遺伝カウンセリングでも、不妊治療中に経験される様々なお気持ちについてもゆっくりお話をうかがい、お気持ちの整理やサポートをさせていただいていますが、ご希望に応じて臨床心理士が遺伝カウンセリングに同席させていただくこともできます。
頭では理解できても、気持ちがついていかない、納得できないで困っている、ひどく落ち込んでいる、専門的な心理支援を受けてみようか考えている…などの場合には心理士による支援も合わせて受けていただくことで、よりお役に立てればと考えております。
■利用方法
- 日時:月曜〜土曜 9:30〜16:30
- 時間・料金:
通常の遺伝カウンセリング 1時間程度・3150円
心理士同席での遺伝カウンセリング 2時間程度・5250円 - 予約方法
- @ 予約電話: 06-4308-8824(音声ガイダンス番号212)
- A 受付またはスタッフにお声かけください。
- 場所: 3F 遺伝カウンセリングルーム
お一人でも、ご家族でお越しいただいても結構です。ご家族で来られた場合も、お一人ずつお話しする時間を設けることもできます。どうぞ、お気軽にご相談ください。
■生殖遺伝カウンセリング担当者
遺伝カウンセリングを担当するのは、認定遺伝カウンセラーです。他にも必要に応じて医師や看護師、心理カウンセラー、胚培養士などと連携して、皆様をサポートいたします。
山本あゆみ(認定遺伝カウンセラー)
遺伝子や染色体、出生前診断…聞いたことはあるし、気になったことはあるけど、誰に相談して良いのかわからない。また、インターネットなど情報が多すぎて、何が正しいのか、また自分がどう考えたら良いのかわからない。こうしたことで漠然と不安がある。
そんな時は、どうぞいつでも遺伝カウンセラーに会いに来てください。正確な情報の提供や、気持ちの整理のお手伝いをさせていただきたいと思います。
皆様が十分に納得して次の一歩を踏み出せますよう、少しでもお役に立てればと願っております。
■染色体 / 流産 / 着床前診断 について
1.染色体とは
体質や顔の特徴などが親から子どもに伝わることを「遺伝」といい、その遺伝情報の単位となっているのが体の設計図ともいわれる「遺伝子」です。この遺伝子がタンパク質と結合し、規則正しく折りたたまれたものが染色体です。つまり、染色体とは「遺伝子がギュッと集まったもの」です。染色体は細胞の核の中に存在します。

顕微鏡でみた染色体をきれいに並べると、図2、3のように見えます。通常ヒトは2本1組(うち1本は父親から、1本は母親から受け継ぎます。私達がもつ遺伝情報は半分は父親から、もう半分は母親からもらっているということですね。)の染色体を計23組、合計46本の染色体をもっています。1番〜22番(常染色体)までは男女共通ですが、最後の2本(性染色体)は男女で異なり、女性はX染色体を2本、男性はXとY染色体を1本ずつもっています。


染色体の変化には「数の変化」と「形の変化」があり、46本すべての染色体において数の変化や形の変化は起こりえます。これらの変化によって、受精卵の染色体の量に過不足が生じると、受精卵が胎児になっていく途中で成長が止まって妊娠成立しなかったり、一旦は妊娠しても流産や死産となります。また、数%程度にはそのまま妊娠が継続し、子どもが染色体の過不足をもった状態で生まれてくることがあり、この場合には症状は軽度から重度までと差はありますが、知的障害や発達の遅れ、身体や臓器の形の異常などが見られることがあります。
染色体検査によって何らかの変化が明らかになった場合でも、染色体そのものを治療することは出来ません。遺伝カウンセリングでは、カップルが必要とされる情報をわかりやすく提供し、その後どのようにしていくのか十分納得された上で決められるよう、一緒に考え、サポートいたします。
一般に妊娠の15〜20%は流産に終わるといわれています。流産率は女性の年齢が高くなるにつれて上がっていきます。
グラフ1は女性の年齢と流産率についての当院のデータです。2005年〜2008年までの、胎嚢確認以降の流産率を女性の年齢ごとに示しています。

流産原因の50%〜70%を占めるのは、赤ちゃん側の染色体異常(多くは数の異常)です。
当院で流産した赤ちゃんの染色体を検査した結果でも、約7割に染色体異常がありました。

流産した赤ちゃんに染色体の変化がある割合は、女性の年齢が上がるにつれて高くなります。
グラフ3 2002年〜2008年3月までの、流産絨毛染色体検査を行った件数(検査不可能はであったものを除く)のうち、結果が異常であった件数の割合を女性の年齢ごとに示しています。

流産した赤ちゃんの染色体変化のうち、ほとんどは「数の変化」ですが、約2%に「形の変化」がみられます。
「数の変化」とは染色体の本数が合計46本でないことを示し、代表的なものには、1組2本の常染色体の数が1本減って、残りの1本だけになるモノソミーと呼ばれる状態と、逆に1本増えて3本になるトリソミーと呼ばれる状態があります(図4)。モノソミーでは2本の染色体に含まれる遺伝子が共同で行っていた作業が1本だけになってしまうことから、うまく体作りが行えなくなり、大部分は流産してしまいます。トリソミーでは2本の染色体が行っていた共同作業にもう1本の染色体が割り込む形になり、体作りの統制が乱れるため、流産や死産になってしまうことが多いですが、妊娠が継続し何らかの症状をもって生まれてくる場合もあります。

また、数の異常は性染色体にも起きます。例えば、通常はXXの性染色体が1本減ったり(XO)(図5)、逆に1本増えてXXXになることや、通常はXYの性染色体がXXYやXYYになる等があります。性染色体の数の変化が原因で流産や死産になることもありますが、生まれてきた場合、一般的には常染色体の数の変化の場合ほど重症でないことが多いです。

数の変化のほとんどは精子や卵子が作られるときに、偶然に生じます。したがって、赤ちゃんの染色体に数の変化があった場合にも、通常はカップルの染色体は正常である場合がほとんどです。
受精卵における「数の変化」は女性の年齢が上がるにしたがって、少しずつ増えていきます。
「形の変化」は染色体の一部分が入れ替わったり、過剰になったり、失われているといった状態を示します。形の変化の大部分は「転座」と呼ばれるタイプの変化です。中でも「相互転座」と「ロバートソン型転座」が多くあり、稀に染色体の一部が上下逆転している「逆位」もあります。

これらは染色体の一部が互いに入れ替わっただけで、全体としての染色体の量が、入れ替わる前と変わっていないので、通常ご本人(転座保因者)に症状はありません。しかし、この方から作られた精子や卵子では、保因者でない人に比べて染色体の一部分が多かったり少なかったりしやすくなるため、なかなか妊娠に至らなかったり、流産や死産を繰り返したり(60〜70%の流産率)、妊娠が継続し、何かの症状をもって生まれる(数%)といったことが起こることがあります。
なお、胎児の染色体については出生前診断(妊娠15週以降に行う羊水検査など)で調べることができます。

形の変化は精子や卵子が作られるときに偶然生じる場合と、親がその原因となる染色体の形の変化をもっている場合があります。偶然生じたのであれば、次回以降に妊娠した赤ちゃんの染色体にも形の変化が起きる確率は、他のカップルの確率と同様に稀です。しかし、親の染色体に形の変化があった場合には、次回以降の妊娠でも赤ちゃんの染色体に形の変化が生じる確率が、他のカップルよりも一般的には高くなります。流産を繰り返されているカップルの3〜6%に染色体の形の変化が認められるというデータがあります。
カップルが染色体の変化をもつかのかどうか、採血を行って染色体を調ベることができ、約3週間ほどで結果がわかります。染色体検査前に、遺伝カウンセリングでこの検査を受けるに当たっての詳しい説明を行います。
カップルの染色体検査を行い、原因となる染色体の形の変化(転座)がカップルのどちらかにあり、かつ2回以上流産を経験されている場合には、このことによるさらなる流産を避ける手段の一つとして、「着床前診断」という方法があります。
当院では、2回以上流産歴のある転座保因者のご夫婦に対し、日本産科婦人科学会の承認を得られた場合に着床前診断を行っており、関西で初めて着床前診断によって出産された方もいらっしゃいます。
着床前診断では、体外受精を行い受精卵が8細胞に分割した時期(受精後3日目)に1〜2個の細胞を取り出し、染色体検査を行って、染色体の量に過不足がないと診断された胚(正常または転座保因)だけを子宮に戻します。(詳細は図8参照)
この方法により、流産率を大幅に下げる(次回の妊娠での流産率が自然妊娠では60〜70%ですが、着床前診断をすると15〜20%になるといわれています)ことができます。
日本では2004年から実際に始まった研究段階の新しい技術です。
しかし、いくつかの難点があるのも事実です。例えば、@診断が正確でないことが5%程度ある、A診断の結果、すべての胚が染色体異常で子宮に戻せるものがない、B子宮に戻しても着床しない、流産することがある、C長期的な予後がまだ分からない、D費用が高額(体外受精の費用とは別に、20万円程度。診断する受精卵の数によって異なります)、E自然妊娠可能な方でも体外受精が必須などといったことが挙げられます。
また、出産に至るまでの流産回数はカップルによりますが、着床前診断をしなくても転座保因者カップルの60%以上が最終的に出産されるという報告もあります。

上記は実際に着床前診断を行うまでに必要な流れです。このうち、着床前診断にのみ必要となるステップは「胚生検」と「染色体検査」です。その他のステップは通常の体外受精で必要となるステップと同じです。
図9はFISH法にて胚の染色体検査を行った際の写真です。
着床前診断では、46本すべての染色体について調べるわけではありません。ご夫婦の染色体検査の結果に基づき、既に分かっている変化の有無についてのみ調べます。
写真のようにシグナルの光り方を見て、染色体に過不足がないかどうかを調べます。

2008年〜2011年6月中旬までの当院における着床前診断(PGD)の実績です。
| PGD実施件数 (人数) |
胚移植件数 (人数) |
臨床的妊娠 (人数) |
||
|---|---|---|---|---|
| 2008 | 5 | 2 | 1 | ⇒出産 |
| 2009 | 7 | 5 | 2 | ⇒2名出産 |
| 2010 | 2 | 3 | 1 | |
| 2011 | 3 | 1 | 1 |
*胚移植はfreshET,cryoET含む。

- まずは、福田医師の外来を受診していただきます。染色体以外に流産の原因がないかを調べるため、不育症の検査を行います。
- 遺伝カウンセラーより、着床前診断について詳しい説明があります。 また、それまでの治療経過やご夫婦の染色体検査の結果を踏まえ、着床前診断のメリットやデメリットについて話し合い、着床前診断がご夫婦にとって本当に解決策となるのかどうか、遺伝カウンセラーと一緒に考えます。
- 当院とは別の施設(第三者機関)で、遺伝カウンセリングを受けていただきます。 着床前診断について詳しい、院外の医療者の遺伝カウンセリングを受けていただき、第三者的な立場からの見解も踏まえ、着床前診断を受けるかどうか、ご夫婦でよく考えていただきます。
- 再度、福田医師の外来を受診していただき、着床前診断を希望されるかどうかについて話し合います。
- 着床前診断を希望された場合には、院内の倫理委員会で症例ごとの検討を行います。
- 倫理委員会で承認が得られれば、日本産科婦人科学会へ申請を行います。
- 日本産科婦人科学会から承認が下りた場合には、着床前診断実施可能となります。
※「やっぱり、着床前診断を受けない」という申し出は、上記のどの段階でも可能です。
※上記のようなステップが必要ですので、実際に着床前診断を行うまでに6ヶ月〜1年ほどの時間を要します。
流産した児やご夫婦の染色体検査、着床前診断の詳細については、福田医師、認定遺伝カウンセラーより詳しくお話させていただきます。気になることなどがございましたら、お気軽にご相談ください。疑問点を解消し、今後のことなど一緒に考えていきましょう。
最後に染色体異常が認められるカップルにも、他の原因で流産している可能性はありますので、不育症の検査結果に異常が認められれば積極的に治療を行うことが大切です。また万が一、再度流産された場合には、流産した赤ちゃんの染色体検査を行うことで、赤ちゃんの染色体が本当に流産の原因であったかどうかを確認することができます。実際には赤ちゃんの染色体には変化を認めないこともあります。

























